「大奥妖斬剣」その9

 「……説明は以上だ。五行結界陣、首尾は心得ておるな?」
 伊織に焦がれる少女の姿から凛々しい孔雀衆筆頭の顔に戻った香苗は、室内に集った面々を見回しながら告げた。孔雀衆、そしてくノ一集、合わせて二十数名の女たちの姿がそこにあった。いずれも並みの武芸者をしのぐ鍛錬を積んでいる。
「香苗殿。一つよろしいか?」
 それまでずっと押し黙っていたくノ一頭が声を発する。
「どうぞ」
「本来なら五行結界とは外部からの侵入を防ぐために張るもの。それに、今宵一晩、一切の警備を解けとはいささか妙な話。あやかしの跳梁を促すようなものではないでしょうか? この護符も、わたくしの知るものとはいささか違う所が見受けられます。本当に効果があるのでしょうか?」
 疑念を含んだ視線を香苗に向けて尋ねてくるくノ一頭に、きりっとしたまなじりを向けた香苗は。
「ある! 効果は必ずある。あの方を……伊織殿を信じるのだ!」
 伊織の美貌を脳裏に思い浮かべ、その胸をかすかに高鳴らせながら断言していた。
(そう。あの方は志乃を救ってくれた。……この場を取りまとめて戻ったら、あの方と)
 伊織との甘美なひと時の期待に心を飛ばし、香苗はかすかに頬を赤らめてしまう。
「おそれながら、香苗殿はあの伊織という女武芸者に過度の期待を抱いておられるように思います。聞いた所では、志乃殿と千枝殿は体内のあやかしを伊織殿の手によって排除され、快癒に向かわれているとのこと。しかし、それだけであやかしの本体を討てる確証とはなりませぬ。どうか、深夜の見回りだけでも許可していただきとうございます」
 最も至極なことをくノ一頭は頼み込んできた。彼女らにしてみても、外部から呼ばれた武芸者の指図に無条件で従うことには少なからぬ抵抗があるのだ。
 それに、くノ一頭は伊織の手腕をまったく見ていないのである。少なからぬ疑念を抱くのも当然だった。
「事の責任は全てわたしが負います! この場はどうか、わたしの指示に従っていただきたい!」
 香苗の強い口調と視線に、かすかにざわついていた女たちはしん、と静まり返っていた。
 
 くノ一頭の説得に成功し、護符の配置が滞りなく済んだのを確認した香苗は、足早に伊織が待つ部屋へと向かっていた。
「伊織殿、只今戻りました。首尾は上々でございます」
 やや息を荒げて告げる彼女の前で、障子が音もなく開いた。
「お疲れ様でした。中で詳しい話を聞かせてください」
 伊織の声に引っ張られるように香苗は室内に迎え入れられる。
「伊織殿のおっしゃった通り、今宵一晩、夜警を回らせぬように手配いたしました。しかし、本当によろしいのですか? この機に乗じてあやかしがその魔手を広げはしないでしょうか?」
 くノ一頭に問われたままの質問をする香苗の身体を、伊織が強く抱き締めていた。
「あっ! 伊織様……んふぁ!」
 戸惑った声を上げる彼女の身体が畳の上に押し倒される。
  伊織は己の淫欲が命ずるままに香苗の着衣を剥ぎ取り始めた。頬を染め、かすかに抗うそぶりを見せながらも、香苗はまとっていたものを次々に剥き取られていく。
 帯を解かれ、肩口から胸元にかけてのほの白く照り輝く肌を露出させられると、ふわりと甘い少女の体臭が薫った。
「わ、わたしばかり脱がせるなんてひどうございます。伊織殿も……」
 頬を染めてうつむきながら、香苗は上目づかいで伊織に訴える。その様子は恥らう乙女のものであった。
「あ……そっ、そうだな……その前に夜具を……」
 性急過ぎた己の情欲を冷まそうとするかのように伊織はいそいそと立ち上がり、部屋の隅に畳まれていた布団を伸べ始める。
 その後ろから今度は香苗がそっと抱きついてきた。下帯一本の裸身をさらした彼女は、伊織の背に身体を摺り寄せながら帯を解き、着物を脱がせていく。
 伊織もその動きに逆らわず、着衣を脱ぎ去って細く引き締まった裸身をあらわにしていた。互いの手が下帯にかかり、シュルシュルと音を立てて取り去っていく。
「あん……っ」
 すでに熱く潤み始めていた秘裂をしなやかな布地が擦り抜けていく快感に、二人は同時に甘い声を漏らす。
 向かい合った二人は唇を合わせて舌を絡ませ合いながら夜具の上に倒れ込んだ。

 闇の中で白い裸身が絡み合っていた。
 伊織と香苗は、一糸も纏わぬお互いの身体を擦り合わせ、甘く熱い吐息を漏らしながら悦楽のひと時を過ごしている。
 上になった伊織は、のけぞり震える香苗の股間で指先を蠢かせて濡れそぼった秘裂をくじりながら、彼女の舌を吸い嬲っている。
 クチュクチュという淫らな水音と、少女の喉の奥から漏れるくぐもったよがり声が続き、夜具に溢れ出した淫蜜の染みが拡がって行く。
 強すぎる快感の奔流を押さえ込もうとするかのように、香苗は両腿で伊織の手を挟み込んで動きを制しようとしているが、巧みな指の動きは一時たりとも止まずに熱くむず痒い快感の波を送り込んでくる。
(ああ……融けるぅ! 伊織様の指で……弄り融かされちゃうっ!)
 身体中の水分全てが淫蜜に変じて秘裂から溢れ出してしまうかのような、熱く、深く、堪らない快感だった。
 愛しい両性具有の武芸者の指ではるかな高みに向かって飛翔させられながら、香苗は気も狂わんばかりの喜悦と、伊織への深い愛情を感じている。
 幼い頃から武芸一筋に生きてきた香苗は、年頃の娘らしい恋愛とは無縁であった。
 十四歳で孔雀衆に抜擢されてからは、女だけの世界で生きてきたのだ。
 年上の孔雀衆の一員に導かれて同性の閨の悦びを教えられ、それなりの快楽を知っていたが、局のもとで伊織と強制的に交わらされ、両性具有の熱い勃起に処女を散らされた瞬間、香苗は新しい快楽の世界に足を踏み入れていた。
 いきり立った剛直で女陰を深々と貫かれ、擦り立てられることによって初めて得られる真の女悦を知ったのである。
 もし、無理やり男と交わらせられていたら、香苗はその行為に嫌悪を抱いたかもしれないが、美しい女性の姿を持った伊織には、すんなりと身を任せる事が出来た。
 伊織に貫かれた瞬間、香苗は両性具有者の妖しい魅力の虜になっていた。その後、彼女と行動を共にしてその頼もしさ、超絶の技能を持ちながらも決してそれをひけらかそうとしない性格に惹かれていったのである。
「んあぁ……ひんっ! ……伊織様ぁ……」
 しこり立った乳首を柔らかな舌に包まれて舐め上げられ、甘噛みされて、香苗は蕩けきった声を上げて伊織の頭を掻き抱く。
 伊織の左手はもう片方の乳首を摘んで揉み転がし、更に右手は香苗の秘所をくちゅくちゅと音を立ててこね回している。
 しこり立った雛先を包む包皮が優しく剥かれ、あらわになった桜色の肉の真珠がそっと摘まれる。
「あひいぃぃぃぃ!」
 雛先から走り抜けた銀色の閃光が香苗を貫き、羽化登仙の境地にいざなった。
 香苗のおののきが治まらぬうちに、伊織の唇が裸身を滑り降り、しとどに濡れそぼった秘所に吸い付く。
 吸引によって膣内に溜まった淫蜜をチュルチュルとすすり込まれていく魂までも吸い取られるかのような壮絶な快感が、香苗を更なる高みへと押し上げ、のけぞらせた。
 止めどなく溢れる愛汁をすすりこんだ伊織の唇が、剥き上げられてひくついていた雛先をついばみ、柔らかな舌が包み込んで舐め転がす。
「ふあぁぁ! まっ、また来ますっ! やぁぁぁ! また果てちゃうっ!」
 立て続けの絶頂の波に襲われた香苗は、あまりにも甘美なその感覚に乱れ狂った。
 更に伊織の舌は秘裂を滑り降り、絶頂でジンジンと痺れている秘裂のすぐ下に息づく可憐なすぼまりに濃厚な舌戯を施し始めた。
 舌先がすぼまりのしわの一本一本を丹念に舐めほぐし、くるくると回りながら次第に中心に近付いていく。反射的に硬くすぼまった括約筋の末端を執拗に掘り返すようにされ、筋肉の緊張が緩んだ一瞬に、ぬるりと中心を抉られた。それはごく浅い挿入ではあったが、香苗には内臓の奥にまで熱い快楽の矢が突き込まれてくるように感じられた。
「ひあぁぁぁぁっ!!」
 不浄の門を熱く濡れた舌にじっくりと舐め回される背徳的な快楽が、いまだ絶頂のおののきの中にいる少女の裸身を激しく震えさせる。
 ぺちゃっ、ちゅぴっ、ちゃぷっ、ちゅぷっ……。
 伊織の舌が香苗の肛門に愛を注ぐ音が少女の切れ切れのすすり泣きに混じって室内を流れていく。秘所とはまた違う種類の快楽の疼きが沸き起こり、新たな絶頂に香苗を導いてゆく。
 硬くすぼめられた伊織の舌が、すぼまりの中心に深々と突き立てられた所で、少女の意識は宙に飛んでいた。
「……香苗殿……」
 自分を呼ぶ伊織の声に、香苗はゆっくりと目を開けた。
 しばらく失神していたらしい。
 手足が甘く痺れ、腰が抜けてしまって、全身の関節が外れてしまったように弛緩していた。そんなしどけない自分の姿を、闇の中でも宝玉を思わせるきらめきを放つ伊織の双瞳が見下ろしていた。
 香苗は局の元での交わりでは、伊織がその技巧を手加減していたのだという事を身をもって知っていた。
 伊織の愛撫は、今まで施されてきた同性からの愛撫がかすんでしまうほどの快感を与えてくれたのである。
「んぁ……伊織様……来て。わたしの中を伊織様のものでいっぱいにしてください」
 更なる快楽の予感に突き動かされ、甘く痺れた舌で、香苗は挿入をせがむ。
 その両脚を抱え込み、ふっくらと花開いた秘裂の中央でひくついている子壺の入り口に伊織は黙って腰を進めてくる。入り口に熱いものが当たった。
「ふぁ!」
 切なげな声を上げた香苗の裸身がのけぞり、挿入を急かすように腰が浮く。
 その瞬間、伊織のものが入り口を押し広げ、ゆっくりとめり込んできた。
「あぁぁぁぁ!」
 香苗は喜悦の表情を浮かべてのけぞり叫ぶ。
 女同士の交わりでは得られなかった一体感が、香苗を包んでいた。
 伊織も己のこわばりが熱いぬるみに包まれる快感に眉を寄せ、瞳を潤ませながら、少しずつ香苗の中に入ってゆく。
 強烈に締め付けながら、奥へ奥へと吸い込んでいくような膣内に、勃起が完全に埋まっていた。結合部からトロトロと愛汁が溢れて夜具を濡らし、香苗の切れ切れのすすり泣きが室内に流れる。
 伊織はそのまましばらく動かず、香苗の口を吸い、舌を絡め、甘い唾液を交換し、喉を鳴らして飲み込んだ。彼女の舌は巧みに動いて香苗の舌を絡め取り、優しく噛んで扱き上げたり、自分の口の中に吸い込んで舐めしゃぶったり、技巧の限りを尽くしてもてなしていた。
 香苗は更なる密着感を求め、まだ痺れの残る腕で伊織を抱き締め、腰をせり上げるようにして、より深い挿入をせがむ。
 伊織はそれに応えて香苗の身体を抱き締め、恥骨を押し付けるようにしながら子宮口をグリグリと刺激した。愉悦にわななく子宮を亀頭の先端で押し揉まれるたびに魂が蕩けそうな快感が沸き起こる。
 重なり合った二人の乳房が柔らかく押し付け合い、互いの体温が混じり合い、心音がトクトクと甘く響き合う。
 二人の喉から耐え切れぬ快楽のうめきが漏れ、舌が絡み合う湿った音と交じり合って、淫靡な曲を奏でている。
 まだ二度目の交合であるにもかかわらず、ずっと以前からこうして交わりあっていたかのように、二人は感じていた。
「んふぁ……このままずっと居たい……」
 香苗は喜悦の涙に濡れた瞳で伊織を見つめながら、自分の想いを素直に口にする。
「……」
 伊織は黙ってその瞳を見つめた後、再び口を吸った。
 やがて、どちらからとも無く腰を蠢かせ始めた。
 小さな動きを繰り返し、お互いの腰の奥に、快感のさざなみを広げてゆく。
 伊織の強張りの亀頭部が子宮口を擦り上げ、香苗の膣がうねりながら勃起を締め上げて奥へ奥へと引き込もうと蠕動する。
 それに応えるように伊織は腰を突き込み、より深くその胎内をこね回した。香苗の胎内も無数の細やかな肉襞で勃起の胴を包み込み、締め付けながら蠕動する。
 二人の美少女剣士は、すすり泣くような快美の声を上げながら、己の淫欲の命ずるままに互いを貪りあっていた。
 あやかしの事も、任務の事も、全て脳裏から消し飛ばし、二人は快楽の渦にその身を投じて絡み合い、高まっていく。
 緩やかにくねっていた伊織の腰の動きが次第に大きくなり始めた。
 互いの身体をおののかせていた快感のさざなみが次第に大きな波に変わっていく。ずっと味わっていたいとも、早く絶頂を迎えてそのめくるめく快感に包まれたいという葛藤を感じながらも、二人の少女は身体の内から沸き起こる甘美な波に揺られている。
 その果てに待っているのは、快楽の嵐。
 おののく香苗の身体を組み敷き、伊織の腰はその胎内を本格的にかき回し始めた。ふわりと熱く柔らかに蕩けて締め付けてくる膣道を何度もこじ開けるように突き上げ、腰をくねらせて女肉の隅々まで快感を刷り込んでいく。
 かつて味わった事のない快感に狂い泣く香苗の声を口付けで封じながら、伊織は技巧の限りに香苗の胎内を責め立てる。
 夜が明けたら、いよいよあやかしの本体を狩らねばならない。
 泣き喘ぐ香苗を更なる高みに導きながら、伊織は心の片隅で、冷静にその時のことを考えていた。
 既に策は施してある。夜明けと共に、朝日を浴びた護符は五行結界を形成する。
 伊織の作った護符では、その効果は持って半時……その間に、結界の効力で正体を現したあやかしを追い詰め、斬る。
 そうすれば……。
 伊織の身体の下で、快楽にむせび泣く香苗の表情に、一瞬、別の女性の顔が重なり合って見えた。
 白く、儚げなその美貌は、伊織がはじめて愛し、禁断の果実を貪り合った兄嫁の姿。
「うくぅぅぅっ!」
 伊織の身体を急激に絶頂感が襲っていた。ビクンビクンとしゃくりあげるこわばりから発した甘美な電流をこらえる間もなく濃厚な精汁が気が遠くなりそうなむず痒さを置き土産にして勃起の内部をせりあがってくる。
 勃起が深々と香苗の胎内に突き入れられ、弾けていた。しゃくりあげる動きで子宮をこね回しながら、熱く濃厚な体液が次々に撃ち出されて胎内を満たしていく。
 熱い迸りの直撃を受けた香苗の裸身が大きくのけぞり、喜悦の頂点を極めた。
 気が遠くなるほどの快美な脈動と共に、香苗の中に精が放たれる快感に身震いしながら、伊織は再度、自らの心の中に誓っていた。
(沙織姉さま……赦免状を携えて、必ず迎えに参ります……)
 あやかし討伐の見返りとして、伊織が要求したのが、かつて禁断の快楽を貪りあった義理の姉、沙織を俗世に引き戻すための赦免状だった。
 不義密通を働いた武家の妻は、本来なら密通相手ともども、問答無用で斬殺されるのだが、両家の名誉を守る為もあり、伊織は勘当、沙織は尼寺に出家させる事で決着をつけていた。
 一旦仏門に入った者を俗世に引き戻すためには、寺社奉行所に申し出て特別の手形の発行を受け、それを携え、尼寺の総本山に赴いて赦免状を発行してもらう必要がある。
 勘当と同時に、人別(戸籍)も剥奪されている伊織には、寺社奉行所に申し出る権利が無かったのである。
 あやかし討伐の功がなれば、人別にも組み入れられ、上総月家への帰参も叶う。
 伊織にとっては、数年前の過ちの全てを清算する為の戦いでもあった。
 やがて、精の迸りも終わり、伊織は意識を失った香苗の上に、弛緩した身体を預けていた。
 最後の最後で、香苗以外の女性の事を想い、それで果ててしまった事に、いささかの後ろめたさを憶えている。
「ん……んっ……」
 香苗が意識を取り戻し、かすかに身じろぎした。
 さすがに武芸者だけあって、遊郭の女達のように、朝まで失神しっ放しという事は無いようだ。
「香苗殿……お粗末様でした……」
 伊織は優しい声でささやきかけ、口を吸う。
 香苗も可愛く鼻を鳴らしながら、伊織の首に腕を回し、きつく抱きついてくる。
 しばらくの間、二人は快楽の余韻を反芻するように、互いの舌を味わっていた。


 続く

大奥妖斬剣08                   大奥妖斬剣010

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