「大奥妖斬剣」その7


  香苗は伊織が寝付いたのを確認して部屋を出た。
 伊織ほどの武芸者になると、室内の人の気配を鋭敏に悟ってしまい、安眠できないだろうとの判断である。
 事の顛末は既に老中に知らせてある。彼女はこれから詳しい報告を行うために本丸に向かわねばならない。
 恐らく今は千枝の処遇の件で喧喧囂囂の議論が繰り広げられているのであろう。
 かなりの無理難題を言って帝室の血を引く彼女を大奥に貰い受けておきながら、それをあやかしに犯され、あまつさえ異形の子まで孕まされたとあってはあまりにも大きな失態であった。 あやかしの子を孕まされた女性を将軍に抱かせるわけにもいかず、かといって放逐してしまうことも出来ない。幕閣連中にとっては頭の痛いところだろう。
 ことの処断のいかんによっては帝室の怒りを買い、幕府の屋台骨が根底から揺らぐかもしれなかった。
(あやかしにそのような政治的な意図があったとは思えないが……)
 香苗はその事について、伊織が目覚めたら尋ねてみようと思っていた。彼女は今回の騒ぎの根底に、人の意図が垣間見えると言っていたのである。
「ふう……いかんな、あの人に頼り過ぎている。孔雀衆筆頭であるこの私が……」
 思わずそう口に出してしまう。
 香苗は大奥警護の要、少女武者集団『孔雀衆』を束ねる人物である。幼い頃から居合を習い、師から『剣意一体』とのお墨付きをもらった程の達人である。
 剣意一体とは、思考の速度と同じくして剣が動くという事で、居合の究極目標の一つであった。実際、彼女の抜刀はまさに目にも止まらぬ速さであった。鞘の内で充分に加速され、鍛え抜かれた手首のしなりを存分に活かして抜き放たれた二尺八寸の業物は、鉄で裏打ちされた胴丸を付けた人の胴でさえたやすく断ち切ってしまうのである。その域にまで居合の腕を極めた女剣士は、恐らく香苗ただ一人であろう。
 更に棒手裏剣術も極めた彼女は、遠近両方の戦いをこなす、孔雀衆最強の剣士だった。
(そんな私が伊織殿に頼りきっていては皆にしめしが付かぬ……。)
 香苗は血色のいい頬を二、三度パンパンと叩いて気合を入れ直す。
 しかし、それでも伊織の面影は脳裏から消えなかった。

 その頃、伊織は深い眠りの中にあった。
 普段は後頭部で束ねている髪を解き、頭の両側で先端を軽く束ねて寝乱れないようにしている。からすの濡れ羽色という表現がぴったりとくるつややかな髪だった。きりっとした眉、すらりと通った鼻筋、こうしてみるとまさに絶世の美女の寝姿であった。
 今は女武芸者としての精悍な印象は和らぎ、深い寝息を立ててあどけないとさえ言える表情を浮かべて深い眠りに落ちている。
 あやかしの幼生を捉えるために使った髪の毛の網を操る術が、予想以上に彼女の精神と肉体を消耗させていた。
 彼女が使ったのは最上級の退魔師が使う技だったが、ろくな精神集中も行わずにぶっつけ本番でやったせいで、あやかしの幼生の発する淫気を大量に吸収してしまっていたのである。
 そのままでは伊織も淫欲に狂う牝獣と化してしまう所だが、武神流の師から習った錬気法を使い、淫気を別の形に変えて中和を行っていた。
 本来なら天地に満ちる気を体内に取り込んで体力の回復を行ったりする仙道の技なのだが、その技法を応用して悪しき気を吸い込んだ時にもそれを浄化して無害な物にする事もできる。
 この方法を用い、伊織は体内に吸収した淫気の大半を浄化する事に成功していたが、大量の濃密な淫気を無理やり中和した事も、彼女が消耗する原因の一つになっていた。
 それでも浄化しきれずにわずかに残った淫気が、眠りの中にある伊織に淫らな夢を見せている。
 伊織は夢の中で全裸でぬるま湯の中を思わせる暗黒の空間を漂っていた。その裸身を無数の白く、たおやかな女性の指がまさぐっている。
 彼女はその指の持ち主に覚えがあった。彼女に性の愉悦を教え、共に背徳の行為に溺れた義理の姉、沙織のものである。
 他の何者とも知れぬ指なら激しく拒んだであろうが、彼女に性の愉悦を教え込んだ沙織の指を、淫気に侵された伊織の心は受け入れてしまっていた。
 濃密な淫気の残滓が、伊織ほどの武芸者にさえ激しい淫情を沸き立たせているのである。
 彼女が抵抗しないのを悟った白くたやかな指が引き締まった裸体の輪郭を羽毛で掃くような優しさで撫で回し、次第に淫らな動きを加えてゆく。
 細くくびれた脇腹を這い、すらりと長い脚を撫で回し、背筋に沿ってさわさわとくすぐり、うっすらと腹筋の凹凸を浮き出させた滑らかな腹を指の腹で掃き、へその窪みを優しくくじる。さらにサワサワと肋骨の輪郭をなぞるようにしながらふっくらと形よく盛り上がった乳房へと這い登っていく。
 ぞわぞわと鳥肌立つようなくすぐったさが、身体を這い登り、乳房の根元にたどり着くと、伊織の喉の奥から小さくため息が漏れた。
 半球型の肉の丘の感触を楽しむように、白い指が蠢いた。弾力に溢れる乳肉の根元から先端に向かってゆっくりと揉み上げるような動きで少女剣士の乳房が弄ばれる。
 ふわり、ふわり、と、軽い動きで柔肉に指が沈み込み、ほの温かな快楽のさざなみを胸の内に沸き起こらせる。
「んっ!」
 ついに細く白い指先が乳房の側面を這い上がり、乳首を捉えていた。形の良い胸の頂上で淡い桜色に色付いた乳首を、冷たく柔らかな指先が執拗にいじり回す。
 軽く摘んでクリクリと揉み上げたり、ツンと尖った敏感そうな先端を優しく擦ったり、指の腹で乳輪を執拗にくすぐったり……。
 やがてその刺激に反応した乳首が固く屹立していた。周囲を彩る小振りな乳輪も色合いをほんのりと桃色に染めて盛り上がっている。りりしいまでの美貌を持った少女剣士の健康的な乳肌の頂上で、煽情的な茜色に染まってしこり勃った乳首は、食欲さえも掻き立てられてしまうほどの淫らな眺めであった。
 白い指先は左右交互に勃起した乳首を摘み上げて引っ張っては離して愛撫する。素晴らしい弾力を見せて引き伸ばされた乳頭は、肌の滑りで指の圧迫から逃れ出し、プルンと小さく弾みながら元のたたずまいを取り戻す。それをまた指が摘んで引き上げる。
 ふわり、ふわり、くすぐるのと摘むのとのちょうど中間の力加減で優しく、しかし執拗で淫らな愛撫が繰り返された。
 固くしこった敏感な乳首が軽く引っ張られては指の呪縛を離れて扱きあげられながら元の位置に戻る。その度に甘い愉悦の電流が伊織の身体を貫き、引き締まった裸身を震えさせた。伊織の意識は過去に受けた愛撫の記憶からその快感を再現しているのである。
「ん……ああぁ……」
 何度も続けられるうちに、伊織は夢の中で堪えきれぬ快楽のうめきを上げ始めた。
 身体の自由は全く利かないのに、与えられる快感だけが現実と寸分替わらず彼女を責め立てて来る。
 頃合良しと見たのか、乳首を摘んでいた指先が新たな愛撫を開始した。
 今度は親指でグリグリと乳首を乳房の柔肉の中に押し込み始めた。
 揉み抜かれてコリコリに固くしこった乳首が柔らかな胸肉の中に押し込まれてぐりぐりと揉み転がされる。
 先程よりも深く、甘痒い疼きの波紋が胸の奥へと拡がって行く。
「うっ! ……あ……ああぁ……くぁ……はぁぁ……」
 背を反らせ、指先に嬲られている胸乳を突き上げるようにした明らかな快感の声を伊織は上げていた。
 乳首から真っ直ぐに乳肉の奥へと走る未開の乳腺を、熱い疼きが貫いていく。白く淫らな指先は、乳首を乳肉に押し込んだまま、蜂の羽ばたきを思わせる速度で細かく震動し、繊細な快楽神経を掻き鳴らす。
「うく、あ、んはあぁぁ……」
 乳肉をフルフルと震わされながら、伊織は熱い吐息を吐いていた。その表情には隠し切れぬ女悦の笑みが浮かんでいる。
 乳肉への震動責めを続けながら、淫夢は新たな責めを繰り出していた。
 ぺろり、と、腹を舐められた。指の愛撫はそのままに、今度は舌が伊織の肉体から快感を引き出し始める。
 舌はまろやかに浮き上がった腹筋の輪郭をなぞり、腹部を唾液で濡れ光らせると、やがて形のいいへその窪みに滑り込んでいた。
 熱い唾液に濡れた舌がへその窪みの縁をくりくりとなぞり、窪みの底を尖らせた舌先が掃き清めるように蠢いている。
 クチュクチュと音を立てて掘り返すようにされると、伊織の喉からすすり泣きのような声が漏れた。これは沙織が良く行う愛撫だった。へそを舐められるもどかしい刺激が、伊織の子宮にまで伝わって震えさせる。
 子宮の震えは彼女の股間ですでに力をみなぎらせていた薄桃色の肉柱をさらに熱く疼かせ、硬く反り返らせる。
 勃起の先端で赤く色付いた肉の実の切れ込みに、キラリと悦びの露がきらめいた。
 クチャクチャと湿った音を立てて舌でかき回されているへそにその先端を届かせようかと思われるほどに反り返ったこわばりは、愛撫を催促するようにヒクンヒクンとしゃくりあげている。
 あやかしの淫気は彼女が最も淫らに狂える快楽の記憶を再現していた。
 ひとしきりへそを舐めた舌はひくついているこわばりの横を掠め、腿の内側を舐め始めた。練り絹を思わせる滑らかな内腿の肌を柔らかな唇でついばまれると、伊織の腰がビクビクと反応する。
 内腿を散々吸い、舐め、軽く噛んで責め立てた舌は、次の攻撃目標を、既に潤み始めていた女陰に定めていた。
「ひんっ! ……ふわぁぁ……」
 ちろり、と縁を舐められただけで伊織は泣くような声をあげてのけぞる。この反応は、初めて沙織の舌で果てさせられた時のものだった。
 今の伊織は武芸者としてではなく、一人の少女であった頃の記憶の中で、執拗で、淫らな舌の洗礼を受けていた。
 舌はふっくらとした恥丘の輪郭をなぞるようにちろちろと這いずり、秘裂にはあえて触れずに焦らす。もどかしい快感の連続に、伊織の腰は勝手にカクカクとせり上げられ、秘裂がふっくらと充血し、ほころんで、内側の鮮紅色の媚粘膜を覗かせ始める。
 淫夢の舌は決して焦らずに内腿に吸い付いて舐め上げ、会陰を突付き、再び性器の縁にねっとりと舌を這わせる。無意識のうちに伊織は膝を折り立てて腰を突き上げ、性器そのものへの愛撫をせがんでいた。
 武芸者としての矜持は眠りの奥深くに封じられ、快楽に浮かされた一匹の牝としての淫らな本能があらわになり始める。
 クイクイと腰を突き上げて疼きの解放をせがむ少女剣士を焦らし抜き、徹底的に淫欲を高めてから、巧みに蠢く淫夢の舌は濡れそぼった姫割れに侵入してきた。
「ひああぁぁ!」
 喜悦の涙さえ浮かべて伊織はのけぞる。ついに舌先が秘裂に滑り込んできた。柔肉の谷間を熱い唾液に濡れた舌がヌルヌルと蠢き滑り、体奥から湧き出した甘酸っぱい愛汁を残らず舐め取ってゆく。
 さらに、秘裂の縁に指がかけられ、ぬらり、と、鮮紅色に色付いた媚肉の谷間をいっぱいに割り開いて、奥の奥まであらわにしていた。
 ヒュクヒュクと切なげに収縮する小振りな膣口も、本来なら雛先があるべき部分からそそり勃ってひくついているこわばりも、尻の谷間で恥ずかしげに収縮する尻の穴も、全てが丸見えになっていた。
 何者かの熱い鼻息と、剥き出しになった秘め所の全容をじっくりと観察してくる粘ついた視線を股間に感じる。
「ひっ! ……んあぁぁぁ……」
 深い眠りに囚われたまま、伊織は羞恥と妖しい快感に頬を染めてのけぞる。
 鼻息がぐっと近付いてきた。匂いを嗅がれている……犬のようにクンクンと鼻を鳴らしながら、反り返ったこわばりの先端から滲み出す先走り、甘酸っぱい淫蜜に濡れそぼった肉の谷間、しっとりと汗ばんだ尻の穴までも、じっくりと秘め所の匂いを検分された。
 そんな恥辱を味わえば、普段の彼女なら怒り狂っているはずだが、淫夢のなかではそんな辱めも即座に快楽に変換されてしまう。
 匂いを堪能した淫夢は、今度は味覚を楽しむことにしたようだった。
 いきなり膣口に吸い付かれ、溜まりに溜まった淫蜜をチュルチュルと少しずつ吸い出される。
「ひいいぃっ!」
 恥ずかしい声を上げ、伊織はカクン、と力無く首をのけぞらせた。
 ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ……と、小刻みに膣口をついばむように吸われ、とめどなく湧き出す愛汁をすすり込む唇の感触にわなわなと身震いし、敏感な肉ひだをじっくりと舐めしゃぶられて声も出せずに身悶える。ぬるり、と、膣口に舌が挿入されていた。
 その刺激に伊織の腰はガクガクと激しく震え、内部の粘膜がきつく収縮して舌を締め付ける。挿入と同時に伊織は果てていた。現実での絶頂のような鋭さはないものの、その分異様に長く続く絶頂感に、伊織の意識は白濁していく。
 絶頂の余韻にさらされている身体を更に淫らに狂わせるべく、舌と指が同時に彼女のこわばりに絡みついていた。
 本来なら女性の陰核がある部分から屹立し、ほの赤く染まった肉柱は、彼女の最も敏感な性感帯であった。
 既にとろりとした先走りを噴きこぼす先端を熱く柔らかな唇が捉え、こわばりの胴にほんのりと冷たい白い指が絡みついて優しく扱き始める。
「うっ! あああっ……あっ……あっ……あああっ!」
 先端をクルクルと優しく舐め回され痺れるような疼きで腰が抜けそうになる。軽く歯を立ててついばむように吸われると、わずかに残っていた力が全て吸い出され、全身がぐったりと弛緩してしまった。さらに鈴口を柔らかな舌先で何度もなぞられ、次第に早く、強く扱かれて、伊織は切羽詰った声を上げてビクビクと腰を痙攣させた。
 指先は勃起の胴にくっきりと浮かび上がった尿道の輪郭を根元から先端に向けて扱き上げ、内部に溜まっていた先走りの露を押し出していく。
 鈴口からトロリと噴きこぼれた露は、残らず舌で拭い去られ、更なる分泌を促がすように、舌先で尿道口を掘り返された。
「うぁ、あっ、あっ、あっ!」
 敏感極まりない尿道口を舌先で甘く抉られ、伊織は切れ切れの声を出して身をこわばらせる。ここまで耐えに耐え抜いてきた射精の予感が腰の奥に重くわだかまっていた。
 淫らな口は精液を吸いだすかのようにチュウチュウと吸引し、白い指は勃起の胴を強く握ってグチュグチュと扱き上げる。
 さらに別の指が裏筋をコリコリと引っ掻いて刺激し、むず痒い疼きを送り込んでいた。
(もう、もう……果てるっ、果ててしまうっ!)
 淫夢の責めに陥落し、精を迸らせるのはもはや時間の問題か、と思われたが、その時、伊織の意識の奥底に封じられていた理性がわずかに甦っていた。
(違うっ! これは……沙織姉さまの愛し方では無い! ……沙織姉さまは、優しく声をかけて私を喜悦の頂点へと導いてくれた。こんなに淫らに私を貪りはしなかった……違う! 違うっ!)
 わずかに戻った理性を総動員し、伊織は淫夢からの脱出を試みる。丹田のツボに気を集め、それで射精衝動を押さえ込みながら、淫夢の呪縛を振りほどこうと身悶える。
 重い枷のように肉体を縛るあやかしの淫気から脱しようと、彼女は己の気を一気に外へ向けて解き放っていた。
 すっ……と、舌と指の感触が遠ざかり、伊織は宙に浮いている自分の存在を感じる。目の前には、夜具の中で己の股間をくじりながら悶えているはしたない自分の姿があった。
(これは夢ではない……何だ? ……魂魄飛翔の術か?)
 宙に浮いた状態で、夜具の中で艶かしく悶える己の姿を見下ろしながら、伊織はそう悟っていた。
 それは奇妙な感覚だった。感覚は宙の一点に固定されている状態なのだが、視点は空間を自由に動き回れるのだ。修行中に山中で出会った山伏に聞いた魂魄飛翔の時の状態に良く似ていた。
(しかし、わが姿ながらなんと淫らな……あやかしの淫気のせいだと思いたいが……見てはおれぬな。かといってあの身体に戻ればまたあの快楽責めに囚われてしまう……この機会だ、魂魄飛翔、試させてもらおう)
 自分の痴態を見かねた伊織は、城内の探索を行ってみることにした。物理的な制約を離れて動き回れる今の状態なら、あやかしの潜伏場所を発見できるかもしれない。
 伊織は意識を集中し、視線を徐々に部屋の外へとずらしていった。ふすまを抜け、壁を抜けて外に出た視界を、さらに上昇させ、大奥の敷地の大半を眼下に望む。なんとも不思議な感覚である。
(あらためてその広さがわかるな……)
 鳥のごとき視点から大奥を見下ろし、伊織は思う。
(さて、どこから手をつけたものかな……)
 黙考する伊織の視点が、何かに引かれるようにぐいぐいと下降し始めた。
(何だ? 何かに……引かれて……)
 一瞬で伊織の視点はどことも知れぬ薄暗い空間に引き込まれていた。地下室を思わせる部屋の天井近くに彼女は浮いている感じで室内を見下ろしている。
 彼女の眼下では、あやかしと数人の美女達の淫らな宴が繰り広げられていた。
「おおおおおおっ!おあぁぁぁぁ!」
 石畳と思われる床に突っ伏した女は、尻と女陰を触手に貫かれて獣の如き嬌声を上げ続けている。彼女を貫いているのは男根並に太くなった赤いミミズ状の触手だった。
 それよりも細い、指ぐらいの太さの触手が女の身体をぐるぐる巻きにして蠕動している。全身の性感帯をくまなく責め立てられ、女は悶え狂っていた。
 また、その隣では互いの秘裂をしゃぶり合う女達の尻を触手が貫いて蠢き、胸にもヒルを思わせる触手の先端部が吸い付いて吸い嬲っている。
 触手は乳首を加えてきりきりと捻り上げたかと思うと、大きく広がって乳房全体を包み込んで揉みこねるように吸い、再び乳首を責めるという、人外の搾乳動作を繰り返している。床の上に放射状に広がった赤い触手は、数人の女達を絶え間なく責め立て、魔性の快楽に狂わせていた。
(これは……まさか、あやかしの淫気と同調しているのか!?)
 伝心術という、遠く離れた相手と意思を通じ合う術がある。この術は相手との面識……縁を仲介して成り立つのだという。
 どうやら伊織が取り込んだあやかしの淫気が縁となってこの場所に彼女を誘ったらしい。
 床一面に広がる赤い触手の中央……そこには黒々とした闇のようなものがわだかまっていた。
 瘴気が濃過ぎて、魂魄の状態ではその姿が見通せないのである。
「おあぁぁぁぁ……主様ぁ……お情けを……お情けを下さいませぇぇ」
 女同士で秘裂をしゃぶりあい、尻孔を触手に犯されていた女性の一方が、愛汁にぬめった顔を上げて挿入を哀願していた。
 その声に答えて、黒いもやのような瘴気の中から白くたおやかな女性の腕が突き出される。
「ほほ、百万石の大名の息女が一介の町娘に情けを請うか……これが欲しいか?」
 瘴気の塊がずいっ!と動いていた。
(町娘だと!? あやかしは人に取り憑いているのか!?)
 伊織はあやかしの発した言葉に驚きつつ、成り行きを見守っていた。
 間違いなくこの光景は大奥のどこかで繰り広げられている淫らな宴の様子だった。
 魂魄状態の伊織の視線に気付かぬらしく、あやかしの本体は挿入をせがむ女性の元に近付き、そのもやの中に取り込んでいた。
「あああああっ! 入ってくるぅ! 主様の大きくて硬いものが入って来ますぅ! ひいいいいいいっ!」
 挿入と同時に激しく登りつめたらしい。
「おやおや、動かぬうちにもうこのざまか……ほれ、おまえの欲しがっていた魔性のマラじゃ、遠慮せずに存分に食らうがいい」
 女の声と共に瘴気の塊が動き始めた。じきにグチュグチュというはしたない交合音が聞こえてくる。
 貫かれている女はひいひいと、声にならぬ息を漏らすだけである。声も出せぬ超絶の快感に囚われているらしい。
「ああ、主様ぁ、わたくしにも下さいませぇ……」
「わらわにも……わらわのホトもそれでくじってたもれぇ……」
 他の女たちも甘く蕩けた声を上げて挿入をせがむ。
(むう、公家の娘も居るではないか!)
 伊織は声も無い。予想以上にあやかしは大奥内部に浸透しているようだった。
「ほほほ……なら、私の尻を舐めよ。不浄の門を、その高貴なお口で吸い舐めて清めて見せよ!」
「はいっ! 尽くさせていただきます」
 公家の出身と思われる細身の女性が瘴気のもやの中に沈み込んだ。やがてぺちゃぺちゃという生々しい音が聞こえ始める。
「そうだ! もっと奥まで舌を使え! 奥の奥まで舐めしゃぶり、清めておくれ! きゃはははははっ!」
 はすっぱな笑い声を上げてあやかし……あやかしに憑依された女は腰を使っているらしい。言動からすると、彼女は町娘らしかった。大奥には若く美しい女性が数多く集められている。その大半は銘家の出身者ではあるが、中には容姿端麗な平民の娘が大奥入りする事もあった。そうした娘達の一人なのだろうか?
「ふふっ、そろそろ果てる……たっぷりと注ぎ込んであやかしの子を孕ませてやろう。その子が次の将軍になれば面白い世の中がやってくる。ははははっ!」
 瘴気が一点に集中し始めた。濃密な瘴気をまとった精汁を女の胎内に注ぎ込むつもりらしい。
(むっ!)
 正気が薄れたせいで、女の顔がかすかに見えた。同時に女が伊織の存在に気付いていた。
「!!誰だっ!見ているのは!」
 女が叫ぶと同時に、伊織の魂魄は弾き飛ばされて肉体に戻って居た。

 続く

大奥妖斬剣06                     大奥妖斬剣08

 
 
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