「大奥妖斬剣」その6


  牢の扉にかけられていた大きな南京錠が外され、かんぬきが抜き取られていた。
 熊でも捕らえておけそうな牢の壁に拘束された志乃の下に伊織は歩み寄っていく。
「あ……あぁぁっ! ……犯してぇ! めちゃめちゃにしてえぇ!」
 伊織の姿を見止めた志乃は愛撫をねだって身をくねらせる。薄物一枚の肌は欲情の汗に濡れて布地を張り付かせ、小振りな乳房の頂点ではツンと尖った乳首が痛いほどしこり勃って愛撫を待ちわびている。衰弱しながらも尽きぬ肉悦を求める志乃の声に、伊織は慈愛に満ちたまなざしを向けて歩み寄っていく。
「不憫な……おまえの思い、遂げさせてやろう存分に果てさせてやるぞ」
 優しい口調でそう言うなり志乃の股間をまさぐり始めた。
「あっ! あっ! あああああっ!」
 焦れに焦れた末に与えられた秘め所への容赦無い刺激に、志乃は一瞬にして喜悦の頂点へと昇りつめていた。
 熱いぬるみを吐き出し続ける秘裂を、伊織の指が何度もなぞり上げる。
 ふっくらと開いた柔肉の溝の中に、細くたおやかな指が沈み込んでくねくねと蠢いていた。あまりにいきなりの行為に、香苗も牢番も呆気に取られている。
「あはぁぁぁ! ふわぁぁぁぁ! ひいぃぃぃぃぃんっ!」
 伊織の指が秘所をくじる度に、志乃は立て続けに達していた。彼女は精悍な表情を崩さず、グチュグチュと激しい粘液音を立てて志乃の秘所を責め立てている。
 淫蜜に濡れ光り、ふっくらと充血して花開いた肉の花びらを指にはさんでなぞり上げ、雛先を覆う包皮の上からグリグリと揉み回し、志乃の腰が抜けそうになるまで敏感な突起を繊細な指使いでいじり回す。
「くぁぁぁ……はぁぁんっ! いいっ! それっ! もっとぉ……もっとおぉ……」
 志乃はカクカクと腰を突き上げながら蕩けた声で愛撫の続行をおねだりしていた。
 秘裂からは白濁した愛汁がトロトロと湧き出して志乃の腿を濡らし、床板に滴っている。
 全く見ず知らずの人物に、恥ずかしい事をねだっているという羞恥は全く無い。ひたすらに身を焦がす肉欲の発散を求めてあさましく乱れ狂っていた。
 あまりにも淫らな志乃の痴態にも動じる事無く、口元に優しい笑みを浮かべた伊織は、更なる愛撫を雛先に加えていた。 
 親指と中指で雛先の包皮をそっと剥き上げて、コリコリにしこり立った肉の芽をあらわにすると、人差し指の爪でカリカリと軽く引っかき、淫蜜にぬめった指で軽く摘んで何度も扱き上げてやる。ぬめった指先で摘まれた雛先がつるつると滑る度に、志乃の身体はビクビクと激しい反応を見せる。
 伊織の指先は執拗に志乃の股間で蠢き、淫欲の炎を鎮めるべく快感の波を送り込み続けていた。
 くちゅ……くちゅっ……くちゃっ……粘液質の淫らな音と、志乃の切れ切れのよがり声が座敷牢の中を流れる。
「あひっ! ひっ、ひっ、ひっ!」
 白目を剥いてカクカクと腰を突き上げる少女の動きを軽くいなしながら、伊織は強烈な攻めを続けていた。その瞳には淫らな色は全く無く、慈愛に満ちた笑みさえ浮かべている。
 何か声を発しようとした牢番を香苗は制し、黙って成り行きを見つめていた。
 秀麗な美貌を持った伊織の指が志乃の秘所で蠢く度に、香苗の下腹にも熱い疼きが走り抜ける。
 その胸の内に嫉妬とも、悲しみともつかぬ不思議な感情が去来する。
 ほんの数刻前に処女を捧げ、ともに快楽に泣き狂った相手なのだ。
 その伊織が他の女を泣きよがらせている様子に、香苗は妖しい疼きを覚えていた。自分もその淫らな宴に加わりたい……そういう思いさえ浮かんできてしまうのである。
「うあぁぁぁ……やはぁぁぁぁ!」
 志乃の声音が切羽詰ったものになってきた。膣口に深々と差し入れられた伊織の指が、膣の天井側の一点を執拗に擦り上げていた。
 もう片方の手は、志乃の下腹、ちょうど膀胱の辺りを押し込み、時折グリグリと刺激している。更に、膣口に人差し指と中指を挿入していじり回しながら、その手の親指で雛先のすぐ下側にある小さな尿道口をくにゅくにゅと刺激していた。
 志乃の下腹はうねるように蠢き、伊織の愛撫に応えていた。
 香苗の目からは強制的に放尿させようとしているようにも見える。
「はわぁぁぁ! もっ、漏れるぅぅぅ! 漏れちゃうぅぅっ!」
 獣のようなよがり声しか漏らさなかった志乃が、切羽詰った声を上げて身を震わせる。
 志乃の表情に羞恥が戻っていた。伊織の手で強制的に迸らされる事を恥じてい様子である。先程まで淫欲にかすんでいたその瞳にかすかな理性の光が瞬くのを、香苗は信じられぬ思いで見つめていた。
 甘い香りの汗に濡れた身体をガクガクと震わせながら、志乃は恥ずかしい放出に追い込まれて行った。
「恥ずかしがるな、存分に迸らせよ。それがこの淫獄からの救いの第一歩になる」
 そう言って伊織は、下腹のツボをグリグリと押し込み、膣内に挿入して指で泣き所を抉るように刺激して、志乃の堤防を決壊させようとしていた。
 膣奥を押し込む伊織の指は、コリコリにしこった尿道括約筋の痙攣を捉えている。後一押しで、制御不能の放出を伴った強烈極まりない絶頂が志乃を襲うはずであった。
「はぁぁぁぁんっ!」
 泣き声を上げた志乃の身体が大きくのけぞり、ブルブルと震える。耐えに耐えたものがいよいよ決壊に近付いているらしい。
「ああ……うあぁぁぁ……ああぁぁぁぁっ!」
 絶叫しつつ、志乃は迸らせようといきんでいるようだが、何かが放出を妨げているようだった。
「ふむ……抵抗するか……」
 伊織はぷっくりと膨らんでひくついている尿道口に小指の先を浅く潜り込ませ、軽く指を曲げて拡張してやった。
「ふあぁぁぁぁぁっ!」
 志乃が叫んでのけぞり、プシャアアアアアアッ! と激しい水音を立てて、その秘裂からようやく大量の透明な液体が噴き出していた。尿混じりの潮に混じって尿道口からズルズルと何かが排出されてくる。
 志乃は白目さえ剥いてカクカクと腰を震わせ、甘美な放出の快感に浸っている。
 その尿道口から、迸る淫水に押し出されるように長さ一尺あまりの大ミミズを思わせる何やら赤く細長いものが濡れた床板の上に落ちた。
 香苗にはそれが血の塊にも見えたが、床に出来た愛汁の溜まりの中でそれがくねくねと動き出すのを見てその正体を悟っていた。
「あやかし! 伊織殿、あやかしがっ!」
「承知している」
 落ち着いた口調でそう言った伊織の唇が尖り、フッ!と、短い呼気の音を立てた。
 と、同時に、床で蠢いていたミミズのようなあやかしに数本の針が突き立っていた。
 細い銀色の針は、小指ほどの細さしかないミミズのようなあやかしの身体を正確に縫い止めていた。
「含み針!……」
 口に細い針を含み、呼気によって飛ばす含針術は、接近戦での不意打ち用として身に付ける者も居る。伊織は先程まで普通に会話しながら、針を含んでいたというのか?あるいは一部の忍びが会得しているように、胃に針を忍ばせているのかも知れない。
 針で床板に縫い止められたミミズのようなあやかしは、数秒で動きを止め、やがて融け始めた。ふつふつと泡立ちながら、見る見るうちに融け崩れてゆく。
 あやかしの身体は、死ぬと同時にこのように融け去ってしまう。
 それ故に、人々はおぼろげな記憶を元に絵を描き、像を残し、あやかしの姿と、その恐ろしき所業を後世に伝えようとする。
 既存の生物の遺体を加工し、あやかしの標本みたいなものを作る事を生業にしている者も居た。それらは神社仏閣に納められ、説法の度ごとに引き出されて、人々にあやかしのおぞましき姿と、所業、そしてその対処法を伝えるのである。
 全ては恐怖ゆえの事だった。普通の野獣等とは明らかに異なる淫らで狡猾な加害者、それがあやかしという異形の生物たちだった。
「……伊織殿」
「香苗殿、志乃殿に憑いていたあやかしの一部は吐き出させた。衰弱が激しいが、これで淫欲に狂い泣く事は無いだろう」
 懐から出した懐紙で指先のぬめりを拭いながら伊織は静かに言う。
 志乃は床にへたり込んで気を失っていた。その表情は、安らかなものになっている。
「あ……ありがとう御座いますっ!」
 目に涙さえ浮かべて言う香苗に。
「礼には及ばぬ。私はこの為に呼ばれたのだから。少しは成果を出さねばな……」
 そう言って、ちょっと照れたように微笑んだ。
 香苗は志乃を寝室に移し、身を洗い清めて手厚く看護する事を命じてから、もう一人の被害者、千枝が拘束されている座敷牢に伊織を案内していた。
「千枝殿の様子もああなのか?」
「……もっと酷いものです。もはや、あれは淫獣……千枝様は完全に壊れてしまわれた」
 表情を曇らせて香苗はつぶやいた。
「……あやかしめ、何をたくらんでおる……」
 伊織は歩きながらつぶやく。
「何か、思う所があって千枝様を?」
 香苗の問いに。
「おそらく。……今回の一件には、人の気配がする」
 伊織は重々しい口調でそう答えていた。
「何と! 何者かがあやかしを操っているとでも?」
「まあ、そういう事だな。他言はしないで欲しい。疑心暗鬼……あやかしは人の和の乱れに付け込むのを得意とする」
 伊織の澄んだ瞳に見つめられた香苗は、表情を引き締めて頷いて見せた。
 千枝の幽閉されている座敷牢は、先程のものよりいい造りである。
 ただし、拘束されている事には変わりなく、身の回りの世話をする者が待機する小部屋が隣にあるというだけの事だが……。
 座敷牢に近付くと、低く唸るような声が聞こえてきた。出産直前の雌犬のうなり声にも聞こえるそれに、時折ケラケラという壊れた笑い声が混じる。
「……千枝様の声です。もう、意味のある言葉は話せません。人の姿や気配を感じると、狂ったように身もだえして愛撫を要求するのです」
 小さな声で香苗は言う。
「成る程、あやかしに何をされたのか調べてみなければ判らぬな。御典医殿の見立ては?」
 やはり声を潜めて伊織は問い返した。
「……子壺の奥に何やら植え付けられているらしいのですが……」
「手術では取れぬのですね?」
「ええ。それに、千枝様のお体に傷をつけるわけにはゆかぬのです。千枝様は……」
「帝室の血を引いておられる?」
 言いよどむ香苗の言葉を伊織は継いでいた。
「ええ。ご存知でしたか……」
 本来なら、帝室の血統者には『鬼衆』と呼ばれる専門の護衛が必ず付くのだが、千枝の場合は少し特殊な事情があって鬼衆は付いていなかった。
 鬼衆はその名のみが武芸を志すものの間には広く知れ渡ってはいるが、その構成、人員、戦闘技能の全てが謎に包まれた戦闘集団である。
 伊織は山中での修行のおり、鬼衆の一員を名乗る男と知り合い、わずかなではあったがその実態と、超絶の戦闘技能を目の当たりにしていた。
 帝室創設の頃よりその護衛戦力として鍛錬を積んできた一騎当千を噂される鬼衆が付いてさえいれば、今回の悲劇は防げた筈なのだが……。
「全力を尽くしてみよう。……先程のようには簡単に行かぬだろうが……」
 伊織は先程と同様に牢番に命じて鍵を開けさせ、室内に足を踏み入れていた。
 明かりを落とした室内には淫欲による狂乱を少しでも抑えようと焚かれた阿片混じりの香の煙がふわりと漂っている。耐性の無い者ならそれだけで陶酔感に捕われて腰砕けになりそうであった。その部屋の中央で目隠しをされ、くノ一衆が使う独特の緊縛方で身体の動きを封じられた千枝が厚手の布団の上で身もだえしている。
 少女の身体がわずかにくねるたびに濃厚な淫臭がその身体から湧き出し、香の香りを圧倒して漂う。
 薄物一枚だけを身にまとった千枝は、半ば夢遊状態であるにもかかわらず、切なげに両腿を擦り合わせて少しでも快感を求めようとしているが、特殊な縛り方で緊縛された縄はそれすらも許さない。
 乱れ狂う彼女の痴態をさらすまいと施されたこの処置が、かえって千枝の淫欲を醸成させ、悶え狂わせていた。
「このままでは余計に状態を悪化させるだけです。紐を切ってもよろしいか?」
 千枝の世話係であるくノ一に許可を得て、伊織は短刀を抜いて紐を断ち切っていた。
 通常、一箇所を切っただけでは決して緩まぬ忍び縛りの縄が一瞬にして切断され、床に散らばる。
 千枝は最初、何が起こったのか判らぬ様だったが、目隠しを外され、眼前で優しく微笑む伊織の姿を眼にした途端、獣のような唸りを上げてその身体にむしゃぶりついていた。
 身にまとっていた薄物をかなぐり捨てるようにして脱ぎ去り、甘い香りの汗に濡れて熱く火照った未成熟な裸身を摺り寄せてゆく。
 伊織はその動きに逆らわず、千枝を抱き寄せてその唇を奪っていた。
 千枝は泣くような声を上げて狂ったように舌を使い、伊織の口腔内をしゃぶり回す。
「……伊織殿、千枝様は上様の御手付きを待つ身、交わりはお控え下さい」
 香苗は少し硬い声で伊織に告げる。
「んっ……くちゅ……承知しています。一度気をやらせて鎮めてからあやかしが植え付けたものを排除する」
 執拗に舌を絡ませてくる千枝をいなしながら伊織は言う。
「できるのですか?」
「んあっ! ……それは今の所なんとも……済まぬ、二人っきりにしてくれぬか、このように人目が有ってはわたしが恥ずかしい」
 着物の合わせ目から指先を滑り込ませてきた千枝に乳房をまさぐられる快感に小さくうめきながら伊織は言った。
「あ、こっ、これは失礼!」
 香苗は頬を染めてそう言うと、人払いをし、自分一人座敷牢の外に残る。
 目隠し布の向こうからは千枝の切なげな喘ぎと舌を絡み合わせるクチュクチュという湿った音、伊織の息継ぎの音が聞こえてくる。
「伊織殿……」
 香苗は胸の高鳴りを鎮めるように手を当てて小さくつぶやいていた。
 その声に自分でも意識しなかった切なげな響きが含まれているのに気付いた香苗の頬がさらに赤く染まる。
(恋しているのか? この私があの方に……)
 香苗は孔雀衆の筆頭になってからまだ一年、普通の娘なら恋の一つもしていておかしくない年齢である。大奥という特殊な世界に居て、彼女はそういう感情を持つ事を半ば諦めていた。部下や腰元連中と褥を共にするのはあくまでも身の疼きを治め、精神を乱さぬようにする為の行為でしかなかった。
 局に強制されたとはいえ、処女を捧げたのが伊織でよかったと思う。
(伊織殿は私の事をどう思っているのだろう……)
 千枝の艶かしい喘ぎ声を聞きながら、香苗は一人、妙に純情な恋心をもてあましていた。

 その頃伊織は千枝と口を吸い合いながら剥き出しになった千枝の秘所に指を滑らせ、溜まりに溜まった千枝の欲望を発散させていた。
 小振りな花びらをそっとなぞるようにして左右にそよがせ、焦れたようにヒュクヒュクと収縮する乙女の入り口に指先を浅く潜らせて内側の感じやすい粘膜を軽く掻いてやる。
「はっ、あっ、ひっ! それっ、それを、それえぇぇぇっ! ふわあぁぁぁん」
 細腰をカクカクとせり上げて少女は恍惚の表情でのけぞった。彼女の狂乱の源を全て淫蜜に変えて掻き出すかのように、伊織の指は何度も千枝の胎内を掻き責めて夜具の上に甘酸っぱい染みを広げていく。
 伊織の指がその股間で蠢く度に、千枝の声は高く、低く、長く、短く、次第に切羽詰ったものになりながら絶え間なく続いている。
 まだ幼さの残る千枝の肢体であった。細くたおやかで、少しでも荒く扱えば壊れてしまうような危うさと、内側からほの光るような色白の肌を持った極上の美少女である。
 淫らな行為など知らずに育ってきたであろう彼女が、魂を焼き焦がす淫欲の炎に狂って泣き悶え、快楽を求めてくなくなと身悶えする様は、伊織の胸に甘い淫欲の疼きを沸き起こらせる。その肢体を思う存分貪り、涸れ果てるまでその胎内に精を放ちたいという気持ちがムラムラと沸き起こってくるのを、伊織は自制していた。
(さすがにあやかしに憑かれた者の淫気には抗いきれぬか……さて、一度気をやってもらって、それからが勝負だな……)
 伊織は少女にとどめを刺すべく、技巧を駆使して責め始めた。武芸者のものとは思えぬ細くたおやかな指先が膨らみきっても小さな豆粒のような可憐な雛先を摘み、絶妙の力加減で揉み扱く。
 口付けで千枝の嬌声を封じつつ、真珠色の光沢を放つ先端を薄皮の下から覗かせた敏感な肉突起を、そっと摘み上げては放し、クリクリと弄り回して細い裸身を跳ね回らせる。
 左手で千枝の身体を抱き寄せてその動きを制しながら、雛先をじっくりと責め抜き、喜悦の頂点へと幼い裸身をいざなってゆく。
「ふわああああっ! あっ、ひっ、ひいいいいいいっ!」
 口づけを振りほどいてのけぞり、ひときわ高い嬌声を上げた少女の雛先を、伊織の指が摘んで引っ張っていた。快楽神経の塊を引き抜かんばかりの壮絶極まりない刺激に、千枝は大きくのけぞって最初の頂点を迎えていた。
 ぐったりと弛緩した千枝の秘裂にすかさず伊織の中指と人差し指が深々と沈み込み、緊張の解けた胎内を探る。熱く濡れた真綿のような柔肉の感触を掻き分けるようにしながら奥を目指した指は、やがて子宮に到達していた。
(……やはり……捕えたっ!!)
 伊織の双眸がキラリと冷たい光を放ち、千枝の身体が大きく弓なりにのけぞる。内部で何が行われているのか、半ば失神状態の千枝の下腹がグネグネと蠢き始めた。まるで胎内に居る何かが出ようとして暴れ回っているようにも見える。
 秀麗な顔に汗を浮かべ、伊織は千枝の胎内に挿入した指先を蠢かせ続けている。下腹を激しく波打たせ、少女は右に、左に細い裸身を捩じらせて指の責めから逃れようとしている。首の付け根にあるツボを押し込んで彼女の動きを封じ、伊織は胎内をかき回すように指を蠢かせる。戦いと呼ぶにはあまりに淫靡で、異様な行為だった。
「んっ!」
 小さくうめいた伊織の口元に薄い笑みが浮かぶ。彼女はゆるゆると、濡れそぼった胎内から指を引き抜き始めた。その指に奇妙なものが絡んでいる。それは髪の毛を編んだ網のようなものだった。それがゆっくりと引き出されていくに従い、千枝の膣口からはトロトロと大量の白濁した粘液が溢れ、網に絡め取られた何やら蠢くものがゆっくりと引きずり出されてきた。
 その姿は肉色をした巨大なおたまじゃくしのようにも見えた。頭部の大きさは二寸あまり、尻尾にあたる部分に細い糸ミミズの群れのような赤い触手が生えてうぞうぞと蠢いていた。それは千枝の胎内に孕まされていたあやかしの幼生である。
 じゅぷっ! と湿った音を立てて幼生は完全に体外に引き出され、同時に伊織の短刀がその頭部に突き立てられていた。
 幼生はビクビクと痙攣しながらぐずぐずに融け崩れていく。
「ふう……何とかなったか……」
 いささか憔悴した表情で伊織は言う。その右手にはいまだに黒髪で編んだ網状のものが絡み付いて粘液の雫を滴らせていた。
「……伊織殿、もう入ってよろしいか?」
 外からおずおずと香苗の声がかけられる。
「どうぞ……」
 伊織は短刀の刃を懐紙で拭いながら言う。
「随分お疲れのようですが……」
 座敷牢に入った香苗はほんの数分前と比べて明らかに消耗して見える彼女に心配げな声をかける。
「いや、大事無い……正直言って、少し神経を使い過ぎた、よろしければ、しばらく横になって休みたいのだが……」
 くノ一連中が、ぐったりと弛緩した千枝を抱き抱えて御殿医のもとへ連れて行くのを見送りながら伊織は言う。
「はっ、直ちに用意いたします……あの、それは?」
 香苗は伊織が右手の指先からもぎ離すようにしている網状のものについて質問していた。
「……初潮が来る前に千日行を成就させた巫女の髪を編んだものです。あやかしの子を孕んだ女性の胎内からそれを引き出す事が出来る唯一の道具です……一度使うと穢れてしまってもう役には立ちませんが……」
 話すのもつらそうな消耗しきった口調で伊織は告げた。
「初潮前の千日行? そのような事をしたら、まだ幼い子は命が危ういのでは?」
「そう。……だからこそ、あやかしに対抗できる……おっと!」
 立ち上がろうとした伊織がよろけていた。香苗はとっさにその身体を支える。
「未熟者が無理に使おうとするとこのとおり……恥ずかしい限りです。済まぬが、しばらく肩を貸して下さい」
 恥ずかしげな表情を浮かべて苦笑する伊織に肩を貸して微笑みかけながら、香苗は明らかにときめいていた。

 続く

大奥妖斬剣05                   大奥妖斬剣07
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